浅葱の君の爽やかさ


  歌舞伎座 昼の部 2月 3日、2月10日、2月25日(千龝楽)

 一月の久吉くんは無駄に(?)キレイでした。ええ。桃太郎装束も私は好きでした。 ですが、三階からの一度の逢瀬で後をひくことはなかったのです。 ま、二月もあるわ〜という気持ちがあったことも否めませんが、すっきりと爽やかに華やかで キレイで、主要登場人物がほとんど170センチ超え(全員175以上あるかも?) というでかい人だらけの舞台面でも、ひときわ鮮やかに大きくてほとんど、○膳さんを喰ってました。 それで、満足してしまったのです。
 さて、若くて凛々しくて爽やかな若狭くんは、ざ・播磨屋複雑屈折な青年でした。 これは、あとをひく〜。無駄にキレイではなく、+複雑屈折ピュア青年。 怒りが募ってくるとお目目がキラキラと輝いてドキドキしてしまいます。  観るたびごとに若々しく、もろの〜さんの言葉にいちいち表情を変えていくその顔は、 若さゆえの潔癖と短気で、怒りのために白粉の下から紅潮した頬がまぶしく感じられるほどの 青年ぶりでした。そして、ただ単純な若さの短気だけでなく、小身者とはいえ、お育ちの良さ そうな、ざ・播磨屋風の屈折青年でありながら、品のいいお坊ちゃまにも見えました。  しかし、というか、やはりというか、どうしても<単純>には見えませんでした。 判官くんと目配せして気を鎮めるところなどは、思慮深い頭の良い青年でした。 別に若狭くんが単純おバカな若い人である必要も無いであろうと思いますし、これはまた、 本当に<ざ・播磨屋>な感じでとても良かったです。馬盥の光秀にも見えます。今まで集めている 舞台写真の写真帖を見直してみましたら、馬盥の光秀の大紋も同じ浅葱色でした。紋が違うだけ。 両人ともに、大好きです。
 あんなに体がでかいのに(周囲から比べると)若い人のまっすぐな繊細さも漂って、 簡単に言うと水もしたたる若武者ぶりです。うっふふふ。キリギリスな頃の吉さま、 もしくは萬坊っちゃんを彷彿とさせます。  思うに、由良さんのようなたっぷりとゆったりとした大人の色気をかもしだす人であり ながら、心は<青年or少年>なのでしょうねぇ。 というか、本当の大人の男というのは<少年の心>を持ち続けて<はにかみ>を一生まとう 人なのでしょう。ほれぼれ。 <みなしごハッチ>を観て涙したり、<星の王子さま>が座右の書だったり、公に発言される 言葉のほとんどが自虐的謙遜の塊だったり、シャイネスの王子さまだったりして、中村吉右衛門 としての複雑屈折ピュアな<私>が、あの色気を生むのでしょうか。  本当のプライベートな<私>の部分は知る由もありませんが、そのプライベートな<私>の 部分も純粋なまま大人でいつづけることのできる稀有な方なのでしょう。たぶん。 そりゃ、いろいろと苦悩や挫折もあったかもしれませんけども。
 大序から三段目まで楽しかったです。由良さんのように肚に一物、胸に初一念の、表の顔からは 想像できない複雑屈折さでなく、若者の怒りの表情のイキイキとキラキラとしたそのお顔を見る ことは本当に楽しかった。見るたびごとににっこにこしてしまいました。 ええ、笑むところではないんですけどもね、若狭くんはブチ切れ寸前なのですけどもね。 だって、かわいいんだもーん♪きゅん♪  三段目の裃姿は初回は拵えの印象からも由良さんとかぶっていましたが、二度目からは若狭くん でした。    怒り心頭で花道をすっとんで(出てすぐのとこで静止して見得してますが)くる姿にほれぼれ しつつ、客席で。にーんまり。ぐふふ。不気味ですか?そうですか。
 もろの〜さんに掌返しに平身低頭されて、抜くに抜けない刃を押さえ、困ったちゃん怒りな モヤモヤ感が伝わってきて、ここでもこちらは、にやにやきゅーん♪ すでに救いようないですか?やっぱり。。    あなたくらにガタイがよろしければ、足にすがりつく伴内さんをすっこらかーんと蹴飛ばして、 もろの〜さんを真っ二つにするのは簡単かと思うのですが、もろの〜さんてばはいつくばって謝って いますものねぇ。心は別物でも。 正義感の厚いあなたにすればハラワタ煮えくりかえっても、抜けるものではありますまい。 怒りくすぶったまま、せめても悪口をひとこと叫んで、長袴をしゅたっとひるがえし、退出するしか なかったでしょう。ええ。
 あのあと、判官くんが刃傷に及んだことを知って、どうしましたかねぇ?本蔵を叱ったでしょう。 でも、坊っちゃまですし、本蔵がお家と我が身を案じて、もろの〜さんに賄賂を贈ったということは 心底ではわかっていますしねぇ。賄賂はいいとしても、判官くんを抱きとめなくてもよかったろうと。    その後の人生、自分に恥じることはなくても、折あるごとに胸を噛む痛みに苦しむのでしょうね。 この夜はひとりで自棄酒しましたかね。ほろ苦く、美しい色気のある良い大人になってくださいね。 オネーサン、そう祈らずにはおられません。 …ああ、楽しかった〜!若狭くん、だあああいすき〜♪(←口ぶりだけ乙女に戻ってみました。てへ。)
 2007年 2月27日 記  寝ても醒めても 表紙へ