悪龍


 歌舞伎座 昼の部  6月 4日

 宮島歌舞伎の時は、屋外で、厳島神社の社殿と、波音にお月さま、さざ波きらきら。 幻想的な舞台設定の上での奉納舞。(映像でしか見ていませんが。) 宮島でこそのものじゃないんだろうか?芝居の劇場だとどうなるんだろう? と期待と不安な今月の歌舞伎座バージョン。くわうるに、松先生作には、 景清さんトラウマが。。そんなアタシが行ってきましたよ。はい。
 当然というか、松羽目物でした。元が能からということで、それは納得。が、 わあ!地方さんも後見さんも、播磨屋の裃だあ。襲名口上のときに吉さまが着用してる、 肩衣上方に、揚羽蝶の紋があって、胸元から下の袴まで、替え紋の村山かたばみ模様のあれ。 うっわー! 松貫四先生による、吉さま舞う、播磨屋だけの舞台だあっ。 と、ここでぷち感激。うんうん、松先生嬉しいでしょうねぇ。 で、アタシも喜べるのかしらん。とはじまりました。
  と、花道から、♪大〜きな〜のっぽの〜おば〜さん〜♪が登場。 …あら?ま?うん?そんなにでっかくないですよ。団七くんで絞った成果が持続しているのか して顔なんか、細面。体を殺して背をぬすんでいるので、それなりにおばあさん。 でも、わざとらしくはないおばあさん。 品の良い、大柄なおばあさんでした。台詞声も特に変えてないし、<老母>のエッセンス を最低限度に出していて、あざとくないです。 それでも大きいです。ですが、予想よりは違和感なかったです。 (どれだけでかいと思っていたのか、アタシ。)
  一部吉キチさんにすら、「おばーさんなのに、かぶりんで観るのぉ?」と吉マゾ扱いされていた 私ですが、正解でした。 これ、舞台に近い席、もしくは三階でも花道が見えない席だと魅力が十分の一くらいになって しまいます。  でも、大柄な品のいい眉なしおばあさんが、真正面に来たときには、やっぱり、それなりに コワかったです。(^_^;)眉ないよ〜。無駄な表情は消していく=能の面のような顔拵えなのかな? 正直に言って、やはり、おばあさん時は、テンションあがりません。 ごめんね、松先生。  しかし、イメージとして、くどくど恨みつらみを言いつのるおばあさんかと思っていましたら そんなに台詞はなく、長唄に乗せて、表現していくいきかたでした。 これもよしよし。
  上手いんだなあ。そりゃ、上手いんですよ。ええ。 赤さんをあやす仕草や、寝かしつけて愛おしそうに見やる目元から、育っていく息子を 慈しむ母親の気持ちがよおく伝わってきますわ。おかーちゃーん!と叫びたくなりましたよ。  一転、息子を亡くしたと知った刹那の驚き、怒り、哀しみの目の光。 うっまいよねぇ。すごいよねぇ。  ですが、やっぱり、まだ、テンション低いです。 また、こういう不変の哀しみを表現するには、表情の無い面に観客の方が、その心情を感じ取る ってやりかたの方が合うんじゃないかなあと。哀しみの純粋な抽出された想いの結晶を見るよう な、もっと、表情さえも切り捨てたものとでもいうかな。 いや、能を見たことありませんけど。  やはり、生身の歌舞伎役者がやる場合、しかも上手い吉さまですから、その言葉の無い表情表現 がとても伝わってはくるのだけれども、ちょっと技巧的な感じかな。ま、好みですな。  とこうするうちに、恨みを残しつつも、おばーさんひっこみ。 さて、テンションあがるのはこれからです。吉マゾの汚名返上です!(笑)
  悪龍ですよ〜。 物の怪ですから、すっぽんから登場ですよ〜。うっひゃー、こちらは ざ・歌舞伎味ですよ〜。 映像で見た限りでは、あまりにも煩いくらいの隈取のように見えましたが、ナマだと、 そんなことないですよ〜。 悪龍さんは、文句なく、でっかい。頭に乗せてる龍冠もきれいですよ〜。 宮島版より、すこうし大きくて、銀色で派手ですよ〜。 さ、本舞台に来ましたよ、踊りつつ、立ち回りますよ。他の誰よりもでかいですよ。 獅子ものの黒髪バージョンのような地につくほどのロンゲ。ああ、無条件に大好きな 髪型ですよ〜。(おばーさんもロンゲだけどさ) あら、これもまた、団七くんで絞って動き倒した影響があるのかして、 巨大悪龍さんの動きが、綺麗にきまりますよ〜。動きの切れがとても気持ちいいです〜。 重厚にして、軽やかです。 赤い舌がーっ!もありますよ〜。血が騒ぎます。きゃー。 そして、結局、盛綱さんたちの祈祷によって、鎮魂されて引っ込み。
  花道際にきて、本舞台の幕は引かれましたよ。 おお、さすが、 松貫四先生による、吉さま舞う、播磨屋だけの舞台だあっ。2 おお、なになに?はじめて見るよっ。送り三重で三味線に送られて引っ込むのは 見たことあるけど、太鼓に大皮に小鼓に、横笛に送られて引っ込みだあ。 おお、さすが、 松貫四先生による、吉さま舞う、播磨屋だけの舞台だあっ。3 初めて見ました。こういう引っ込み。
  悪龍さんの引っ込み時の花道滞在時間が割と長いです。出ては押し返され 花道を効果的に使って、悪龍の目線も客席にばしばし飛ばされます。 これで、鎮魂されんのかどうかはともかく、むちゃむちゃかっちょよかったです。 大柄な品の良いおばーさんが30分弱、巨大悪龍さんが10分程度の出番ですが この巨大悪龍さんの花道の活躍を拝むためだけでも一等席料金は惜しくありません。
  松先生作品かあ、藤戸ねぇ、息子を失った母の哀しみ。ひいては戦争の虚しさと 世界平和を訴える。。んー、そそられないわあ〜。おばあさん時間が長いのかあ。 んー、どうしようかなあとお悩みのあなた、吉キチなら、観た方が絶対いいです。  そりゃ、演舞場のようには燃えられません。そういうもんでもないし。 ですがですよ、ええ、ほんとに、悪龍さんがかっちょいいですよ。 松先生の訴えたいテーマへの感動とは違う観点になっている気はしますけどさ。 三階席でしたら、必ずや、花道を全部見渡せる席でご覧になることをおすすめします。 ええ、全部が見えないと、悪龍さんひっこみの揚げ幕ぎりぎりのとこでも、舞台がわを 振り返って、きっ!ってしたりしますから。 この引っ込み演出は松先生にブラボーです。
 余談です:  と、演舞場のときにも書こうと思っていたのですが、体を絞られたせいか、 (それでも大きいですけども) あの吉さまが、お顔にだだ汗かきませんねぇ。 団七くんのように動き倒しても、額ぎわや、首筋つけね、胸部分はきらきらしてましたが、 顔そのものには、そんなに汗流れてませんでした。  今月も、額ぎわにきらりんとする程度です。 悪龍さんの最後の方は顔全体がきらきら〜んとしてますが滝の汗って感じではないです。 いや、人間の体ってすごいですねぇ。 お顔いっぱいのきらきら汗も大好きでしたが、これからもずっとそうなんでしょうかね? どちらでも大好きですよ。てへ。 あと二度の逢瀬ですが、花道ばっちしのチケットをゲットしてましたよ。 愛の力ですか、え、偶然ですか、そうですか。 吉さま、かっちょいい!ふぉーっ! ではでは。
 2006年 6月 4日 記 寝ても醒めても 表紙へ