私だけのひとり弁慶


 2005年 9月 2日 3日 歌舞伎座 夜の部

 勧進帳です。弁慶さんです。1997年11月の歌舞伎座顔見世以来の旦さんの勧進帳の弁慶さんです。 さて、「またかの関」とか言われちゃってる勧進帳ですが、私、前に観たのが↑97年11月で、 それ以降観たことありません。旦さんの勧進帳しか観たことないんです。はい。旦さん出演以外の 歌舞伎舞台はほとんど観ていないから。 こりゃ、常日頃、カブキチならぬ、吉キチと自負してる私ゆえでしょう。 えっへん。(全然威張るとこじゃないが)
 さて、前回観たときには、超有名演目でもあり、すんごい期待とともに観たのですが 聞きかじりの耳学問で、とーっても楽しみにしていた、富樫との問答に緊迫感や盛り上がりが 無いように感じられて、期待はちょっと裏切られたかな〜感がありました。 詳細はもうすでに忘却の彼方ですが、問答がびしばししていなかった印象だけが残っています。  ですが、あれからはや8年弱、播磨屋の円熟味はいや増しているだろうし、富樫は富十郎丈だし、 自分も加齢して、それなりに見方や感じ方も変わっているかもしれない。  何よりも、かなりな気力体力を要するお役のようだし、今、観ておかなければ、 心技体のエベレストを見逃すかも?と楽しみではあったのです。ええ。
 ただ、なーんてのかしらん、たとえていえば、色悪をなさる!と聞いたときのときめきとは、 ちょいと違う、いや、かなり違う、安心感のある期待感というかなんというか。    好悪は別れても播磨屋の勧進帳弁慶さんが悪かろうはずがあるまいがな。と 観ていて不安になることはなかろうと。  さすが、播磨屋、ただものではありません。「不安」とは違うけれども、どきどき感のある弁慶さんでした。
 富樫さんと太刀持ちさん、番卒さんらが出て、有名な長唄がはじまって、あれよあれよと 花道からおでましの、義経・弁慶主従一行。おお、ものすごく貧相な四天王。。(あわわ。) そして、弁慶吉さま。 でか。ものすごっく、大きい。圧倒的な存在感で、義経さんはともかく、四天王は明らかに私の 脳内から消えた。 つーか、四天王抜きで、義経さんと2人道中のが逃げ延びられる確率高いんでないか?(おい(^_^;))  6月のトラウマか、台詞がすらすら流れていくと、酔いしれるよりも、安堵してしまう私の心。 嗚呼、とみーも大丈夫だわ。嗚呼、台詞さえ入っていれば、朗々と耳に心地よいわ。うんうん。 ……  いや、きっもちいー。この二人の台詞のやりとり心地よし心地よし。 (意味はわかんないけど。あとで本を読もう)  ああ、これか、これが問答か。おお。特に富樫の台詞の緊迫感、爽やかさ。よきかなよきかな。 しかし、眼は、弁慶さんだけを見つめ倒している私。富樫との台詞の応酬が心地よいのに、 体がちっこいので、視界に入らない。他のもの何も見えない。心地よいが、弁慶さんの声が ところどころ割れ掠れる。ああ、どきどきっ!(ここらでちびりそーでした。初日。。) 阿吽の二字ーっ!(きゃーっ!きめたわーっ!心の声)
え!?お!?これってひとり芝居なんだっけか?や!違うよね。そうだよね。 あ、いたいた。弁慶以外も(こら。。)  問答部分は、心地良い緊迫感もあって、弁慶さんの必死一途さ貫禄は十分伝わるのだが いかんせん、声が割れてるというかかすれているというか、うまあくカバーしようとしているけれども 張るところはちょいときつい。うむむ。自主トレしすぎか、残暑クーラー風邪か?  でも、この関を無事に越えなければ!義経を守らなければ!自分の責務を果たさなければ! という男らしい頼もしい必死一途な気迫はびしびし伝わってくる。 後半に観るのがまた楽しみ。
 見得は綺麗だわ〜。立派だわ〜。ほんとにお不動さんみたいだわ。でも、汗まみれだわ。大変だわ。 しぇー。おお、だいじょぶか?越えられるのか?この関を。 なんとかピンチ脱出。ほっ。…  え!義経さん呼び止められちゃったじゃん?お!きゃー。どきどき。 んがあ!ごお!だあっ!(四天王を抑える迫力気迫は凄まじく、弁慶ひとりを見ていると ぞくぞくっと気持ちよいのですが、考えたら、あんなに抑える必要も無いのではないかとも。。影薄四天王だった。。 またもや、ピンチ脱出。ふぅぅっ。…  あの、男頼もしい姿から一転、体二つ折になるくらい頭を低くして、手をついて、義経さんに詫びました。 なんだか、主従を超えたすら漂います。「忠義」も「愛」には違いないでせう。 かえって、親子兄弟恋人夫婦よりも深く強い絆があるかもしれません。 あまりにも弁慶さんが愛しげに義経の方を見るので、私もつい義経さんの顔の方を見てしまいました。 左目に弁慶、右目三分の一くらいに義経の姿をキャッチしてみました。いい顔してたな〜。 なるほどぉ。  判官御手をとりたまい〜♪っても、義経さんが手をさしのべたらすぐに、とんでもない!もったいない! ってすささささっと飛び退いてしまうので、実際に義経さんは弁慶さんの手をとってはいないと 思うのだけれども、なんて、純愛なんだ。弁慶さんよ。かわゆい。ぽっ。  酒をご馳走になってご機嫌さん。ああ、かわゆくまろやかで色っぽく、男らしく頼もしく、大人らしくて なおかつ、チャイルディッシュだなあ。無垢だわあ。
 はい。気持ちよく踊りますよ。はい。これが有名な延年の舞ですか、そうですか。 ここが、踊りだけど踊っちゃいけないとか禅問答のような口伝のある舞いですか。 …ごめんなさい。よくわかりません。(一所懸命に踊ってるなあしか)  舞いながら、義経たちに、早く去るようアイコンタクト。 富樫に一礼。義経一行が進んでいくのを見やり、  六方です。引っ込みの見せ場、ある意味、ここだけに弁慶さんの存在意義が問われるかもしんない 飛び六方で引っ込みですよ。    お願いだから、「ごゆっくり!」とか「たっぷり!」とかはやめてくださいね。大向こうの神様。 あいや、それは私のわがままか?じゃ、訂正 お願いだから、私の耳には届きませんように。最後まで魔法にかかっていられますように。 守ってくださいね。大向こうの神様。
 もう、弁慶さんが発光してますよ。マジで。私のアドレナリン放出も最高潮ですよ。 ドーパミンもどばどば出てますよ。たぶん。 だんだんっ!だんっ!だだだっ!! …、なんか、あっという間なんだけど、あの飛び六方ってかっちょいいねぇ。 受け止めたいわ。(絶対無理) そのあっと言う間をもちっと長く感じたいので、花道際の後方席もゲットしております。 受け止めますよ。弁慶さん。(心の内だけで)
   初日と二日目を連続で観ましたが、ちょっとつかえても私としては、初日の弁慶さんの方に 軍配をあげます。  初日という緊張感と、物語の緊張感が、巧い具合にツボにはまりました。 ただ、くどいですが、声が気になります。リカバーはされていますが、見つめたおしているだけに 気になってしょうがありません。喉仏の動きまで見てしまうではないか。  初日の弁慶さんを観るかぎりでは、この先、結局追い詰められていって滅亡しちゃう はかない運命の一行を案じて寂しい気持ちになるようなことはありませんでした。  でも、男らしくほがらかで頼もしく強くて賢く情に篤い弁慶さんであっても、けっして、十八番 荒事の神ではない、人間弁慶さんであるとは思います。そこが好きなんだけど。 人間の儚さや不確実性を感じます。不変のものなんか無いっていう脆さと。 みんな、揃って(しょーがないから四天王も(^_^;))蒙古に渡って、ジンギスカン一行になったと思いたいです。  安心演目かと思っていましたが、これも逢瀬のたびに感じ方も違うような予感がして 心ときめいております。次回が楽しみです。はい。  なにはともあれ、千龝楽まで心身ともに機嫌よくつとめられますように。  喉を痛めてらっしゃるなら、一秒でも早く治られますように。お祈りいたします。
9月 5日 昼下がり 記 寝ても醒めても 表紙へ